「未経験からエンジニアになったら、1年目の年収は実際いくらなのか」。結論から言うと、経験者を含む統計の相場より低く始まるケースが多い一方、その後の伸びが大きいのがこの職種の特徴です。大事なのは、1年目の額そのものより「伸びる環境に入れているか」です。
この記事では、統計データで相場と伸びしろを確認したうえで、1年目の年収が低く始まる構造的な理由と、1年目のうちにやっておくべきことを整理します。
統計で見る相場と、未経験1年目の現実
エンジニアの年収相場(年齢別・本サイトの推定基準値・万円)
| 年齢 | 年収相場(推定・万円) |
|---|---|
| 22〜25歳 | 400 |
| 26〜29歳 | 490 |
| 30〜34歳 | 560 |
| 35〜39歳 | 640 |
本サイトの推定基準値です。厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(2026年3月24日公表)の「ソフトウェア作成者」の統計値をもとに、「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与」で算出し、10万円単位に丸めています。
22〜25歳の相場は400万円ですが、これは新卒からの経験者も含んだ統計値です。未経験からの転職1年目は、この相場を下回る提示から始まるケースが多いと言われます。企業側から見ると、未経験者の1年目は教育投資の期間であり、売上への貢献が立ち上がる前だからです。つまり「未経験1年目が相場より低い」こと自体は、市場の構造上ある程度自然な現象です。
一方で注目すべきは伸びです。統計上、22〜25歳の400万円から26〜29歳の490万円へ約90万円伸びます。エンジニア全体では、厚生労働省job tag(システムエンジニア(受託開発))で平均年収578.5万円・平均年齢37.1歳と、他職種より若い平均年齢で高い水準に達しており、若いうちから年収が立ち上がりやすい職種であることが公的統計からも確認できます。1年目の低さは、この伸びの入口として捉えるのが実態に近い見方です。
出典: 厚生労働省job tag「システムエンジニア(受託開発)」 https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/312 (令和7年賃金構造基本統計調査/令和6年度ハローワーク求人統計より)。上の表(ソフトウェア作成者)とは職種区分・算出方法が異なります。
なぜ低く始まるのか: 3つの構造的理由
- ① 教育コストを企業が負担している: 未経験者が戦力になるまでの研修・OJT・レビューの工数は企業の投資です。初年度の給与はその分を織り込んだ水準になりやすい構造です。
- ② 入口の多くがSES・テスト工程から始まる: 未経験可の求人はSES企業に多く、最初は単価の低い工程からのスタートになりがちです。会社の受け取る単価が低い間は、給与の原資も限られます。
- ③ 「実績」がまだ市場価値に変換されていない: エンジニアの年収は経験内容(何を・どの規模で・どこまで任されたか)で決まります。1年目はこの持ち札がまだ少ない状態です。
裏を返すと、この3つは時間と行動で解消できる要因です。「今の年収が低いこと」と「年収が上がらない環境にいること」は別問題であり、見極めるべきは後者です。
1年目のうちにやるべき3つのこと
- ① 実績を記録する習慣を作る: 担当した機能・使った技術・チーム規模・自分の役割・改善した数字を、その都度メモに残します。2〜3年目の転職・昇給交渉の材料は、1年目の記録から生まれます。
- ② 工程を広げる意思表示をする: テストから実装へ、実装から設計へ。「次はこの工程をやりたい」と明示的に手を挙げているかどうかで、1年後の持ち札が変わります。
- ③ 相場を定点観測する: 自分の現在地と市場の相場を半年ごとに見比べ、伸びない環境なら移る判断材料にします。
「伸びない環境」を見分けるチェックポイント
- 開発工程に関わる見通しが示されない: テスト・監視・ヘルプデスクなどの業務だけが1年以上続き、次の工程への道筋の説明がない。
- 昇給・評価の基準が不透明: 何をすれば給与が上がるのかを、上司や人事が具体的に説明できない。
- 教育・レビューの仕組みがない: 先輩のコードレビューや研修がなく、成長が完全に自習任せになっている。
- 案件を選べない・聞けない(SESの場合): 次の案件の内容や単価帯について、希望を伝える仕組みがない。
複数当てはまる場合、1〜2年の実務経験がついた段階で環境を変えることは、年収面でも経験面でも合理的な選択肢になります。実務経験が1年以上あれば「未経験枠」ではなく「経験の浅い経験者枠」として転職市場に立てるため、選べる求人の幅が大きく変わります。
よくある質問
1年目で年収が低いのは失敗だったのでしょうか?
1年目の水準だけでは判断できません。統計上、この職種は26〜29歳で490万円、30〜34歳で560万円と伸びていきます。問われるのは「その伸びを取り込める環境か」です。上のチェックポイントで環境を評価し、実績の記録を続けてください。
資格を取れば年収は上がりますか?
資格そのものより、実務で「何を任されたか」が評価の中心です。ただし基礎知識の証明として評価される資格もあり、資格手当を設ける会社もあります。実務経験を積むことを主、資格を従として考えるのが実態に合っています。
まとめ
未経験エンジニア1年目の年収は、経験者を含む統計相場(22〜25歳で400万円)を下回って始まるケースが多いものの、それは教育投資期間という構造によるもので、その後の伸びしろが大きいのがこの職種です。1年目にやるべきは、額を嘆くことではなく、実績の記録・工程の拡大・相場の定点観測の3つ。そして「伸びない環境」のサインが複数見えたら、経験1〜2年での転職を現実的な選択肢として検討してください。